シビレるニッチ

人口減少が続く日南を「変貌」させた若き挑戦者たち

1年間にIT企業が10社進出、シャッター商店街が4年で再生!

宮崎の南に位置する日南市。
人口減少が続くこの市では、4年前、全国で2番目に若い市長が誕生したそのときから、市全体が変わりつつあります。
有名な美しい景勝地だけではない、まちがもつパワーを最大限生かし、人口を増やす取り組みをしていく。
IT企業が増加し、若者が注目し、移住者の数も増えてきたこのまちの変化を支えてきたのは、「人」でした。
日南を盛り上げるキーマンたちに、具体的な取り組みと、起こっている変化について聞いてきました。

かつての新婚旅行のメッカも、人口減少が続くまちへ

九州南部の宮崎県、その南部に位置する日南市は、人口5万3000人のまち。
広島カープ、西武ライオンズのキャンプ地でもあり、キャンプシーズンの毎年2月は多くのファンや選手で賑わいます。
国定公園の日南海岸は、かつては新婚旅行のメッカで、最盛期には新婚の4組に1組が訪れ、多くの観光客で盛り上がりを見せました。

日南海岸(道の駅南郷)

海岸線と海中の美しさで、来る人を魅了する

しかしながら市内には大学がなく、高校卒業と同時に市外に出ていく若者が多く、さらに高齢化の影響も受け人口は毎年約800人のペースで減少しつづけ、消滅可能性都市にも該当しています。

シャッター商店街が、4年で変貌を遂げた

そんな日南市がここ数年で大きく変わろうとしています。
全国のどこでもあるような寂れたシャッター商店街に、たった4年間で28店舗のテナントが進出し、再開発が進んでいます。大都市の商店街が再生するケースはいくつかありますが、5万人のまちにある商店街がこんな短期間で大きく変わった例は、聞いたことがありません。

テナントは飲食店や雑貨屋だけでなく、ゲストハウスや保育施設、さらにIT企業まで進出しており、いわゆる「商店」街のイメージからは想像できないような再生が、ものすごい勢いで起こっています。日南市の商店街で何が起こっているのでしょうか?

このすごい商店街は、日南市の油津(あぶらつ)という港町にあります。
昭和の始めにはマグロ漁の一大拠点として栄えた油津漁港の近くに立地した油津商店街も大変賑わいましたが、マグロ漁が徐々に下火になり、郊外型店舗が立地しだすと、それに影響され商店街の人通りも徐々に減少していきました。

日南海岸

美しい海岸沿い

そこで、日南市は商店街の再生請負人として民間のスペシャリストを募集しました。
コンサルタントのように知恵だけ出すのではなく、実際に日南市油津商店街周辺に居住することが条件で、委託料は月額90万円ということで非常に話題になりました。

全国(外国からも!)から333人の応募があり、そこで選ばれたのが木藤亮太さんという方でした。

木藤さん写真2

商店街や行政、観光客などいろんな方の話を聞き、定期的にイベントを開催し、少しずつ賑わいを取り戻していきました。そして4年たった現在では28店舗の飲食店やゲストハウス、物販店、IT企業などが商店街に立地し、再生を果たしたのです。

なぜ商店街にIT企業が集まってくるのか

一般的に商店街というと、その字の通り「商店」の集まりをイメージされる方が多いと思いますが、なぜ、商店街にIT企業が集積しているのでしょうか?

現在(2017年4月)、商店街周辺には8社の企業が立地しています。その中の1社「サクシード株式会社」の渡邉さんは、

「日南市は数ある自治体の中で、海・山・川・島の自然環境が非常に豊かであるだけでなく、商店街ではランチの場所や、仕事終わりに飲みに行く場所もあります。また、商店街の人と挨拶しながら出勤することも東京には無い新鮮な体験です」

と話します。さらに、2017の夏にオフィスオープンを目指して準備中のダンドリワークスの加賀爪社長は、「すでにIT企業が集積しているエリアにオフィスを出すことで会社を超えた社員同士の交流も生まれると思います。その交流から新しい気付きが生まれたり、親睦を深めることで会社にとってもプラスになると思い、商店街に進出したいと考えています」と話します。

ダンドリワークス写真

ダンドリワークスのメンバー。若手が増えると状況は変わる

そのような動きを商店街再生請負人の木藤さんは「商店街はその名の通り、お店がたくさん集まっているからこそ、そこで働く人にとっても便利なんです。商店街はお店しかダメ、という固定概念にとらわれること無く、積み重ねてきた大事な歴史を大切にしつつも、時代に合わせて変化を受け入れる。そんな柔軟な考え方を大切にしています。」と語ります。

商店街写真2

かつて廃れた商店街も、今では若者が訪れるストリートへ

若者が集まってくる秘訣

さらに、2017年2月にオープンしたゲストハウス「fan!」もIT企業の集積に一役買っています。
日南に出張に来たビジネスパーソンが商店街に泊まることができるようになったのです。

昼は商店街のIT企業に出張で訪れ、夜は商店街で懇親会、そのまま商店街で宿泊するという、これまでは考えられなかった流れが生まれています。

このゲストハウスを運営するオーナーはなんと大学生の奥田慎平さん。

奥田くん写真1

日南市で開催されたビジネスプランコンテストでグランプリを受賞し、そのまま大学を休学し、日南市に移住。
たった3ヶ月の準備でオープンさせたスーパー大学生です。

「初めて日南市に来て半年後には社長をやってるなんて想像もしていませんでした。商店街や行政の人にお世話になりながらオープンでき、今では世界各国からの観光客や、IT企業の社員の方、さらには全国から視察でお越しいただいた方に宿泊していただいています。これからはIT企業の合宿として使っていただきたいと画策しています(笑)」(奥田さん) 

新しく誕生した若きリーダー

日南市は2013年に行われた市長選挙で33歳の崎田恭平市長が誕生し、これまでの旧態依然とした空気が一気に入れ替わりました。
行政も民間も新しい挑戦をし、それを応援する人たちが集まり、そこからさらに次の挑戦者が生まれるようになったのです。
そんな好循環を魅力に感じ、全国からIT企業が10社も進出し、70名以上の雇用が生まれ、続々と地元に戻る人や移住して住む人たちが集まりだしているのです。

どこにでもある地方都市の一つだった日南市がこの4年間で大きく変わりました。
地方創生の成功例として取り上げられることも増えてきました。

日南市マーケティング専門官の田鹿さんは語ります。

田鹿写真(飫肥城下まつり)

「4年間、様々な取り組みを実施してきましたが、やっと人口動態に変化が見られました。
日南市の全体人口における20,30代の若者人口の割合が増えたんです!
5万人の町ですら人口動態に変化が出てくるのに数年はかかる。この変化を本物の流れにしていくためには取り組みの継続はもちろん、さらなるブラッシュアップが必要です。」(田鹿さん)

日南市の本当の勝負はこれからでしょう。