コラム

ベトナムからの手紙(1) 「憧れがないくらいが、海外移住にはちょうどいい」

シビレでは、東京にこだわらず働く「OFF TOKYO」を実践している人々に、シビレバーなどのイベントを通して、その体験を共有してもらう取り組みを進めています。

今回からは、OFF TOKYOな人々による寄稿ブログを開始します! 第1回は、ベトナムで働くという決断をしたMulodo Vietnam 久手堅(くてけん)さんの物語。ぜひ、ご覧ください!

 


ベトナムに来て早3年。信号なしでバイクの海を平然と渡り、警備員のおじさんと肩を並べて路上でフォーをすすっている日々ですが、ふとした瞬間に自分がここにいることを不思議に感じることがあります。なぜかというと、元々ベトナムに住むことなんて、4年前には全く頭になかったから。それどころか、フォーや生春巻きはタイ料理なのかベトナム料理なのかさえもよくわかっていないレベルで、僕はベトナムに対しての興味を持っていませんでした。

だからこそ「海外とか関係ないな」と思っているあなたこそ、この記事を読んでいただきたいと思っています。「憧れがないくらいが海外移住にはちょうどいい」のです。

東京での順風満帆なWEBエンジニア生活

今、僕はMulodo Vietnamで、開発現場全体の総括マネジメントを行うGeneral ManagerとBoard Member(経営陣)を兼務しています。Mulodo Vietnamは、ホーチミンの日系IT企業で、現在のメンバー数は100人程度。ベトナムのオフショア開発業界では、中堅どころです。

代表は日本Mulodo(ムロドー)のCTOで、過去にはTechcrunch50セミファイナリストとなったこともある叩き上げのエンジニア。また、僕を含めたBoard Memberは、全員エンジニア出身なので、技術指向なオフショア開発会社です。

Mulodo Vietnamのオフィス

Mulodo Vietnamのオフィス

ベトナムに来る前は、東京のあるITベンチャーで働いていました。同僚にも恵まれ、WEBエンジニアとして充実した毎日。しかし、年月を経るにつれ「確かにここで成果は出せているが、これでいいのか?」「まだ頭が柔らかい20代のうちに、違った環境で自分を試したほうがよいのでは?」と考えるようになりました。

ただし、おもしろくない仕事も、将来がない仕事もしたくないし、焦って決めたくはない。そのため、まずは自分の背負っている仕事をしっかり引き続いで、考えるためのゆとりを持つため、次の仕事を決める前に退職しました。

久しぶりの長期休暇でしたが、実はほとんど休まずに、あれこれと走り回っていました。バスキュールとPARTYの作るクリエイターのための学校「BAPA」で、業界の第一線の仲間と日々作品づくりをしたり。ハッカソンで出会った仲間とIoTスタートアップの企画や資金調達のサポートをしていたり。ヘルプを求められてフリーランスで開発していたり。その日々の中でのんびりするための旅行先を探している際に、目に止まったのがベトナムでした。

ローカルの市場(ここに混じってご飯を食べています)

ローカルの市場(ここに混じってご飯を食べています)

ベトナムについて知らなすぎてSkypeで観光相談したら……

ふらふらとネットを徘徊していて、ベトナムにある世界最大の洞窟郡へのツアーを発見しました。ジャングルと川と崖を乗り越えて、洞窟の中でテントを張って宿泊するというハードすぎるこのツアー。大いに興奮して、ベトナムに行くことは決めてしまったんです。しかし、ベトナム自体に対して興味がなさすぎて、その他の観光のやる気が全く起きません。

やる気を出させるには、現地の人に話を聞くのが手っ取り早い。早速、各種専門家を探せるWebサービスで「ベトナム」と打ち込み、一番ビジネスマンらしい人を指定して、Skypeでコールしました。これが、当時のMulodo Vietnamの代表でした。雑談をし、お互いの仕事について話す中で、「ついでにホーチミンに寄ったときにちょっと飲もうよ。ついでに面接もする?」となり、そのままスルスルとオファーに至りました。

さらりと「面接」と書いてはいるものの、まず面接会場はオフィスではなく、日本人街の大衆居酒屋。私の履歴書を肴に、真面目な話やらふざけた話やらを混ぜこぜにした謎な面接でした。面接の前半は「こ、これが東南アジアか」と正直なところ引いていましたが、面接の最後には、キラキラした目で無邪気にベトナムについて語る代表に「この人と一緒なら何か面白いことができるかもしれないな」と少し心惹かれていたのでした。

ジャングル、山、荒野、川、崖を、自分の身ひとつで乗り越え、洞窟の中に宿泊する洞窟ツアー。危険な箇所が多々あり、道中何度か死にかけましたが、日本では得ることのできない最高の体験でした。

そんなにいきなり言われても海外移住できないですよ!

「別に来週から来てもいいよ」と軽く言う代表を尻目に、突然の海外ルートオープンに僕は戸惑っていました。

「自分のスキルは歓迎されているし、日本の将来のエンジニア不足を考えるとオフショアをマネジメントする力は、より必要とされるようになるだろう。今はゴミみたいな英語力も強制的に向上するだろうから、他国に行く前のステップとして考えることもできる。給料はベトナムの物価に合わせて下がるが出費が減るので、生活はゆとりがでる」

いいことは色々あって、キャリアとしても問題はないはずですが、やはりなんだかんだ言って、海外です。日本で今まで築いてきた生活があり、ベトナムに住むことなんて全く考えていなかったのですから、なかなか腑に落ちません。

幸い、日本国内にも引き合いはあるので、帰国後に冷静にマトリクスを書きながら、条件の比較検討をしていました。しかし、無視できない感情がずっと心に引っかかっています。日本に帰ってからも、なんだがベトナムについて思い出すと、どうしてもわくわくしてしまうのです。食べ物がおいしいこと? 自然の素晴らしさ? 人の活力と暖かさ? どれも確かに良かったけれど、少し違う気がする。

ベトナムの「今」は、「今」しかない

ある日、近所の誰もいない道を歩いていて、唐突に気が付きました。「僕は、ベトナムの前向きな街の色に心が踊ったのだ」。今の僕には東京は無色に見えるけれど、かつて上京した東京の朝は、とても都会的で洗礼されていて、とても青く凛として見えていました。

そして、僕が見たベトナムは、それはとても鮮やかな色だったのです。たった1週間の滞在の中でも、激しく街の様子は変化し、エネルギッシュな若者たちがそれを突き動かしている。失われた20年のど真ん中を生きていた僕には、経済発展する最中のベトナムの鮮やかで明るい空気がとても輝いて見えたのでした。

「ベトナムのこの輝きは今しかない。そして、年齢を考えても、日本での安定した生活を一度捨てて、発展途上国に飛び込んでみることができるのは、今が最後だ」

そのとき「海外」に対しての戸惑いが消え、「感じたい」という気持ちに切り替わりました。「幸運の女神には、前髪しかない」。チャンスは一瞬なのだから、やらないで後悔するよりも、常にやって後悔したい。戸惑いが、決意へと変化した瞬間でした。

パッションにあふれる若者たち(サッカーで勝った日の夜)

パッションにあふれる若者たち(サッカーで勝った日の夜)

憧れがないくらいが海外移住にはちょうどいい

もともと僕は、地元の岡山で地域振興活動をしていたこともあり、どちらかというと地方移住指向だったので、冒頭に書いたようにベトナム移住なんて全く考えていませんでした。しかし、このような偶然が重なり、ベトナムに移住することになったのです。

実は、ベトナムあるあるネタで「海外に憧れている人ほど、早く帰国してしまう」というネタがあります。キャリア構築のためではなく「一度海外に住んでみたい」という気持ちが中心でベトナムに住み始め、キャリア構築が上手くいかず、1年ほどで海外生活に満足して帰ってしまうというものです。

一方、特に海外生活に対しての過度の期待も持たず、日本で実績を積んだ後に、キャリア構築の一環としてベトナムに来た場合。既に培ってきた実力があれば、計画的なキャリア構築に成功する可能性が高く、結果的に長期的にベトナムに滞在することになるのです。

かく言う私も、思い返してみれば、目の前に選択肢をぶら下げられるまでは、ベトナムに対しての憧れは特になく、「キャリアとしてアリだな」と考えただけでした。そういったことから、海外に憧れがないほど、ある意味長期滞在に向いているかもしれないのです。

「あまり海外移住に興味がないなー」と思っていた方も、これから海外旅行に行く際には、「住む」視点で街を眺めてみてはいかがでしょうか。また、現地在住の日本人とも交流すると、新しい発見があるかもしれません。

ベトナムは、日本からの飛行機は往復3万円台から。気軽に海外に行ける時代です。もし、ベトナムに観光に来た際などに、異文化体験としてMulodoオフィスによってください。もちろん、Skypeで「ベトナムってどんな感じ?」という雑談も大歓迎ですよ。

 


Mulodo Vietnamでは、シビレで求人の募集も開始しています。「海外で働くことに興味がある方」「久手堅さんに話が聞きたい」という方は、ぜひこちらからご応募ください!

 

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