イベント情報

伝統産業だけではない、新たな地域の可能性と出会う――「#佐賀ミライツアー」レポート

シビレと佐賀県は、3月6~7日にかけて「佐賀ミライツアー」を開催しました! 当日は、シビレを含めた5社の企業が参加。佐賀県の有田町・伊万里市の伝統や文化を知り、地元の方々と交流しながら、自社のビジネスとどう絡めていけるかを考えていきました。

今回のレポートでは、一部のツアーの様子と参加者の感想を紹介していきます。

<参加企業>

・エンザントレイズ株式会社(鍋嶋正孝さん、森岡昭臣さん)

PowerSystems IBM i (AS/400)開業、オープンシステム開発、VoIPコミュニケーション事業を手掛ける起業。あえて県庁所在地から離れた地に拠点を作っている。

・Nitlon(仙石祐さん)

営業に役立つ自社サービス「kakutoku」を開発。本社を大分県に置く。

・アイティメディア株式会社(伏見学さん)

インターネットメディア企業。伏見さんが所属しているITmedia ビジネスオンラインでは、地方創生関連の記事を多く取り上げている。

・株式会社ミックウェア(吉川澄人さん)

位置情報サービスを保有し、カーナビなどの制御系システムを開発。自社で保有するビッグデータを生かした全国規模のサービス開発を検討している。

6次産業化に成功した伊万里の「ねぎ名人」

伊万里グリーンファーム社長の前田清浩さん

伊万里グリーンファーム社長の前田清浩さん

最初に紹介するのは、伊万里市でねぎの単一栽培を続ける伊万里グリーンファーム社長の前田清浩さんです。同社の特徴は、6次産業化に力を入れていること。品質は良くても曲がっていて廃棄するねぎを、どうにかして販売できないかという思いから始めたといいます。

そこで、試しに事務所の流し台でカットしたねぎをスーパーで販売してみたところ、大好評だったそう。そこから専用の機械を導入するなど規模拡大を図り、今では乾燥ねぎやドレッシングなど多くの加工品を展開しています。2013年には乾燥ねぎが関東地区の生協に採用され、2015年には全日本空輸(ANA)の機内食にも採用されました。

アイティメディアの伏見さんは、「ITを活用した栽培については、どのように考えていますか?」と質問。それに対して、前田さんは「水分や温湿度などのデータを収集するモニタリングシステムの導入や、ドローンによる薬剤散布などに挑戦していきたい」と答えてくれました。

規格外のねぎを活用して6次産業化を進めた

規格外のねぎを活用して6次産業化を進めた

移住者が先頭を切り、熱い想いで地域づくりに取り組む伊万里

このように地域に根ざしている企業が成長を続けるだけでなく、伊万里市には移住してきた若者たちが地域を盛り上げる動きもあります。ツアーでは、伊万里市で地域づくりの拠点となっている「PORTO 3316 IMARI」で、移住者の方々と交流する機会もいただきました。

交流会では、ライターや動画クリエイター、バー経営者、主婦など6人の方々が参加。伊万里の魅力や課題を議論しただけでなく、各々が今取り組んでいることを教えてもらいました。

例えば「伊万里に帰りたいけど仕事がない」と思っている人達に向けた求人メディアの立ち上げ、出産を機に看護師を辞めて閉じこもりがちだった女性が取り組む古民家再生など。移住者が先頭を切り、熱い想いで地域づくりに取り組む様子が見られました。

Nitlonの仙石さんは、自然が豊かといった多くの地方も掲げる謳い文句が伊万里市にもある中で、「どのように移住への動機付けを行うかが課題になると思います。お試し移住の取り組みもありますが、プレ移住のパッケージングをどう展開するかが大切」と話してくれました。

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地域おこし協力隊が町を盛り上げる有田町

次に紹介するのは、日本磁器発祥の地である有田町です。誰もが知っているであろう「有田焼」の発祥地ですが、皆さんはその成り立ちを知っていますか? 有田焼は、17世紀初頭に朝鮮人陶工・李参平らによって、磁器の原料が発見されたことから始まりました。

ツアーでは、磁器の原料が発見された泉山などを見学。「400年かけてひとつの山を焼き物に変えた」と言われる鉱石場は、日本磁器生産に関わる遺跡として、昭和55年に国の史跡に指定されました。生まれてから400年以上がたつ今でも、食器から美術工芸品まで幅広い種類で人々に親しまれていますが、後継者の発掘・育成に苦労しているという声も。

毎年4月29日~5月5日に開催されるイベント「有田陶器市」には、全国から約100万人もの人々が訪れるそうですが、他の地域と同様の課題も抱えているようです。

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そんな有田町にも、地域のために奮闘する若者がいます。地域おこし協力隊の佐々木元康さんです。佐々木さんは、まちづくりの拠点となっている「まちのオフィス春陽堂」で、移住定住促進や空き家の紹介などを行ってきました。

着任した当初は、地元の方々に受け入れられず苦労したそうですが、空き家見学のツアーを地道に開催し続けたことで、徐々に町内の理解が深まったと言います。

「(2018年)3月には、東京から有田町に移住した夫婦が、有田の魅力を伝えていくカフェをオープンするなど、少しずつ移住してくれる方も増えてきました。都市部の人たちの移住先の候補として選ばれるよう、今後も情報発信を続けていきます」(佐々木さん)

そんな佐々木さんは、自身のプロジェクトとして陶芸ができるアトリエを備えたシェアハウス「コネル」も作りました。焼き物やの空いているスペースを借りて、セルフリノベーションを行い、2017年4月にオープンしました。佐賀大学の有田キャンパスに通う大学生や移住してきた陶芸女子らが住んでおり、様々なイベントを開催しているそうです。

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ミックウェアの吉川さんは、ツアー後に「交通に少し不便を感じますが、気候や人柄、文化は申し分ないです。しかし、情報発信の仕方には工夫の余地があると感じたので、名古屋の取り組みなどを参考にされると良いのかなと思いました」と話してくれました。

佐賀ミライツアーの写真集

ツアーでは、上記で挙げた以外にも様々な佐賀のスポットを案内していただきました。一部ではありますが、その様子を写真で紹介します。また、ミックウェアが提供しているアプリ「BeatMap」では、ツアー中にハッシュタグ「♯佐賀ミライツアー」でつぶやいたツイートが、各スポットに紐づいて地図上に表示されています。ぜひこの機会にダウンロードしてみて、ご覧になってみてください!

参加してくださった皆さんの感想と今後「伊万里・有田に期待すること」

エンザントレイズ・鍋嶋さん 森岡さん:
「他の自治体と比較して、足りないと思うことはありませんでした。地元の人達のネットワークも活発ですし、むしろ力強いくらいです。何かあるとしたら、地元に帰りたい人のための情報が充実している伊万里市専用のU・Iターンサイトがあると良いかなと」

Nitlon・仙石さん:
「既存のIT関連会社が少なく、有名/大手企業でない限り、採用面で苦労すると感じました。しかし、この問題は佐賀に限らず、多くの地方が抱える課題です。学生向けのハッカソンを開催するなど、行政や企業だけでない多層的なアプローチが必要だと思います」

アイティメディア・伏見さん
「地方各地を取材していて、行政側にも強いリーダーシップが求められていると感じます。いくら民間にリーダーシップがあっても、物事を進めるためには行政の力も必要なので。そのため、従来型の企業誘致だけでなく、新しいビジネスを作ることができる企業や人を連れてくることが、これからの行政求められるのではないかと思っています」

ミックウェア:吉川さん
「有田・伊万里ともに、中に入ると焼き物を中心にした街の特色や、良い気候、良い人柄がほんの短時間で伝わってきて魅力的でした。『有田や伊万里では出生率が高い』と伺いましたが、女性が働ける仕事や子育て支援の多様さがどこまで充実しているのかは、対話の中から感じられませんでした。ITを活用した、職種の選択肢の多様さやマッチングの仕組みは、どの程度整っているのか気になります」


佐賀といったら、有田焼や伊万里焼といったイメージが強いかもしれません。今回のツアーを通して、焼き物という伝統産業以外にも、若者を中心に地域を盛り上げているといった新たな佐賀の可能性に出会うことができました。

一方で、情報産業という視点では他の自治体と比べて企業が少ないというのが現状です。地元に帰って仕事がしたい、地方でゆっくりとした生活をしてみたいエンジニアにとっては、佐賀への移住や拠点設置が選択肢の一つになることは多くないかもしれません。

シビレと佐賀県では、ミライツアーで見つけた佐賀の魅力を、より多くの人に知ってもらうことから始めたいと思っています。そして、次の未来を作る新たな種に焼き物やITとかけ合わせ、新たな魅力も一緒に作っていきたいです。興味のある方は、ぜひ一緒に取り組みましょう!