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ICTを活用した「仙台のミライ」を創るアプリケーションを――地方創生ハッカソン・レポート

地方創生が叫ばれる中、地方経済の縮小や少子高齢化などの課題に対してICTを活用して何ができるでしょうか。その問いに具体的な成果物で未来への可能性を示そうと5月26日~27日、宮城県仙台市の株式会社NTTドコモ東北支社で「仙台市×NTTドコモ 地方創生ハッカソン〜ICTと創る仙台のミライ〜」が開催されました。

エンジニアやデザイナー、プランナーが集い、創造的なアイデアを生み出し、それぞれの能力を生かしてアプリケーションやサービスを形にする2日間のハッカソンです。

2つのツールを用いて、データに基づいた立証を

ファシリテーターを務めたのはチームラボ株式会社のカタリスト、床並 展和さん。「仙台に移住を考えている人が安心したり希望を持ったり、その予定がない人でも行ってみたいと思うような、仙台との接点をつくるサービスを考えていきましょう」とお題を設定。その上で、なぜ仙台に必要なのか、データに基づいた立証を行うことをルールとしました。

論拠として利用するデータについては今回、2つのツールが用意されました。一つは、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し可視化する地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」。もう一つは、NTTドコモの携帯電話のネットワークを使って24時間365日蓄積している日本全国の人口を性別・年齢層別・居住地域別に把握できる人口統計情報「モバイル空間統計」です。

仙台市の経済面の現状と課題についての説明も行われ、材料が出そろったところでチーム内でアイデアを出し合う「アイデアソン」がスタート。参加者それぞれが考えた企画を全員で見てまわり、評価が集まった企画に絞って4つのチームを作り、ハック(開発)に取り掛かりました。皆さん黙々と作業に集中し、あっという間に2時間が経過。チームごとに中間発表を行いました。

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1班が手掛けているのは、仙台市をユーザーにディスって(=けなして)もらうというサービス「仙台ディスッター」。仙台市が主催するハッカソンとしては冒険的な試みですが、利用者にとっては行政に対する不満のはけ口となるサービスで、市にとっては市民が抱える潜在的な課題を見つけ、よりよい街づくりにつなげるとともに市のイメージアップを図ることができるというものです。

2班は、NHK Eテレの番組「ピタゴラスイッチ」のからくり装置をモチーフにしたウェブコンテンツ「ダテゴラスイッチ」。移住や観光を考える前に、まずは仙台という都市のよさを知ってもらうために、ユーザーの趣味嗜好に応じた仙台の情報を視覚的に伝えるもので、ゴールまで見続けると観光地や飲食店のクーポンが手に入るなど、仙台に行ってみようという動機付けにもつながります

3班は、趣味でつながる地域SNS「ロコココ」。移住を予定する学生や子育て世代、UIJターン者、セカンドライフのシニア層までを視野に入れ、移住先に知り合いがいない不安を解消するため、さまざま趣味のコミュニティーを見える化。同じ趣味の人が集まるようなイベント情報を発信し、趣味友達ができる環境を確保することで、移住への心理的障壁を取り除くことを目的にしています。

4班は、行政などが地域の課題を俎上(そじょう)に載せ、エンジニアなどユーザーがその解決案を提案、議論して受託にもつなげるプラットフォーム「仙台Kaggle(カグル)」。外からだと分かりづらい行政の受託プロセスをオープンにするとともに、誰かのために身近な問題を解決したいという意欲を持つ人に、そのスキルを活用できる仕事を増やすことで定住人口の増加を図ります。

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中間発表で初日は終了。参加者は懇親会で交流を深めながら、引き続きそれぞれのアイデアについて意見を交換し合いました。

ついに、開発したサービスを発表!

2日目は、ランチを挟んで約6時間の長丁場でハックを行いました。この段階になると各チームともプログラミングなど実際の開発作業が中心。時折チーム内で笑いが起きるなど和やかなムードながら、黙々とキーボードをたたく音が会場に響いていました。

あっという間に2日間のハックも終了の時間。全員で拍手をしてねぎらい合い、参加者はやや疲れた様子ながら、達成感を感じさせる表情を浮かべていました。

最終発表では4つのチームがそれぞれ開発したサービスを発表。データに基づくサービスの必要性や期待される効果を説明し、開発したアプリやウェブコンテンツを動かして見せたほか、寸劇も織り交ぜるチームもありました。

次に、各チームのプレゼンに対して審査員が講評。仙台ディスッターに対しては「逆転の発想で面白い」、ダテゴラスイッチには「見ているだけで楽しく、万人に受けるのでは」、ロコココには「既存のSNSと連動させると盛り上がりそう」、仙台Kaggleには「眠っている地域の課題が見つかる可能性がある」といったコメントがありました。

審査は、仙台市経済局産業政策部産業振興課長の白岩 靖史さん、株式会社NTTドコモ東北支社法人営業部長の山田 広之さん、宮城県情報サービス産業協会(MISA)理事の菅野 直さんの3名により「新規性」「地域での有用性」「実現(持続)可能性」「クリエイティブ性」の4項目を基準に行われました。

その結果、1班の「仙台ディスッター」がMISA賞、4班の「仙台Kaggle」がNTTドコモ賞を受賞。2班の「ダテゴラスイッチ」がグランプリの仙台市賞に輝きました。

審査員を代表して、白岩 靖史さんが「2日間と短い時間ながらいずれも完成度が高く、これで終わりにするのではなく引き続き考えてみたいと思わせるような可能性があり、レベルの高いイベントでした」と総評を述べました。

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グランプリを受賞した2班は仙台の株式会社ラナエクストラクティブの社員によるチーム。同社シニアテクニカルディレクターの辺見 直哉さんはハッカソンを通して、「人に使ってもらえるサービスはよりシンプルに簡単にがよいと感じました」と話します。同じく秋山 洋さんは「制作されたもの以外にも面白そうなアイデアがたくさんあって、みなさんの制作意欲に感銘を受けました。『仙台ディスッター』はかなり面白いアイデアで、その開発にも関わりたいとひそかに思っていました」と刺激を受けていたようです。

「仙台ディスッター」を開発した1班のメンバーで阿部 慎太郎さんは「『仙台をディスる』というフレーズのつかみのよさとメンバーに恵まれ、意見発言しやすい環境がありました。それぞれの役割分担も自然にできていたりとチームワークがよかったと思います」と振り返ってくれました。「思い付いたアイデアは素直な気持ちで何でも吐き出してみることが大事で、『やっぱりこれは違うんじゃないか』と心にしまい込んでしまうと何も生み出せないことに気付きました」と重要な指摘もしています。

「自分ごと」が「チームごと」、そして「社会ごと」へ

都内から参加した方はどんな感想を持たれたでしょうか。

「仙台Kaggle」を提案した3班の江間 啓道さんは、「2日ではなかなか足りないボリュームでした。企画勝負になってしまったので、もう少し成果物の精度を上げたかったです」としながらも、「普段考えないことを考えるきっかけになり楽しかったです」と話してくれました。

仙台で働くということについても、皆さんに伺ってみました。

「バランスのよい生活ができ、自分がしたいことに時間、リソースが使えると感じています」(辺見さん)

「住みやすい・働きやすい環境がそろっているので、あと必要なのはもっと大きな仕事をするという状況が整っていくだけではないかと思っています」(秋山さん)

「生活と仕事の両立がしやすいと感じます。首都圏のように人が多すぎることもないため、窮屈さを感じないのも魅力です」(阿部さん)

「仙台で働くことについて後ろ向きではありません。東北出身なのでやはり住みやすいなと感じることが多かったです」(江間さん)。

ファシリテーターを務めた床並さんは「この2日間、地域に対する見え方を変えようと一生懸命考えたプロセスは今後にも少なからず影響するでしょう。見方を変えると関わり方が変わるということをこれからも意識して地域と接していただき、この地域がどうなってほしいか、それにはどうしたらいいかを考えてほしいです。それを口にすることによって仲間ができて『自分ごと』が『チームごと』になり、最終的にそれが『社会ごと』になっていくと思います」と参加者のさらなる活躍にエールを送りました。

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「仙台のミライを創るアプリケーション」の開発に挑んだ今回のハッカソン。その発想や技術もさることながら、参加された方々のように自分が暮らす街、いずれ暮らすかもしれない街として仙台に関心を寄せ、主体的に関わりを持ち、それぞれが持つクリエイティビティーを発揮することが、仙台の輝くミライを創ることになると実感した2日間でした。