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有田町長が考えるオフィス誘致の意義とは 町の「デジタル化」や新たな教育の取り組みを見据えて

「オフィス誘致を有田町の若者の誇りにつなげたい」と有田町長

「世界に誇る伝統産業を持つ我が町に未来を創る企業を迎え、町の若者の誇りをさらに高めたい」。

 そう熱く語るのは、松尾佳昭・有田町長。有田町は2020年、様々な分野でデジタル化を推進しながら、自然を活かした人の五感をととのえるという「有田みらいタウンプロジェクト」を始動した。「デジタル化タウン」と「ととのうまち」この2つの軸でこれからの時代にふさわしい新しい町を創っていくといいます。

松尾佳昭・有田町長

 「有田みらいタウンプロジェクト」で主に進める行政業務のデジタル化=ICT化には、高度な行政経営の実現と政策決定の効率化やICTの潮流を捉えた新たな行政手法の創造、ICTを活用した防災体制の整備、地域の情報化など様々な課題があります。 

 有田町が進めるこのプロジェクトにおいて、サテライトオフィス誘致は重点施策と考えています。「オンライン手続き」「業務のIT(情報技術)化」「ペーパレス化」「シビックテックやビックデータなどを活用した地域課題の解決」「ICTを活用した防災体制の整備」「災害時や緊急事態時の情報伝達手段の多重化・多様化」「世代間交流を兼ねたスマホ使い方講座など情報弱者への支援」という課題を支援してくれる企業を有田町は求めています。

 松尾町長は「サテライトオフィス誘致は私がトップダウンで実行していることから、関連事業の推進しやすさや課題解決を担う部署との連携推進、各部署のICT化に向けた課題が町に集まっているので、ビジネスが拡大しやすい。『リモートワーク』『サテライトオフィス』『ワーケーション』などと、企業の働き方がさまざまに変化していくことにも柔軟に対応していきたい」と意欲を示します。

「有田みらいタウン」イメージ図

関係人口を増やすための有田町のDX戦略

 有田町にとって、DXの活用は業務効率化以外にも関係人口を増やすためにも重要と考えています。有田町の現在の人口は約2万人。「 国立社会保障・人口 問題研究所 」に よると、町の人口は2045年には約1万4000人、2065年には約1万人になると推計されています。松尾町長は「今後、有田町でも確実に人口減少が進んでいく中、DXの活用で『交流人口増』につなげていきたい」と話します。 

 有田町は、2020年3月に定めた「有田町まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「仕事づくり」「結婚 ・出産・ 子育て応援」「地域活力創造」の3分野の取組みを進め、相乗 効果を高めながら「移住・交流 促進」を進めています。松尾町長は「際立 った 特徴 を多く持つ有田町のポテンシャルに、際立った取り組みを組み合わせて、『交流人口増』につなげたい」と意欲を見せます。

 有田町の観光資源の1つで、「重要伝統的建 造物群保存地区」に認定されている「内山地区」は、江戸時代に設けられた「上ノ番所」( 泉山 )から「下ノ番所」( 岩谷川内)までの約2キロにわたり、江戸から昭 和の各時代にかけて建てられた和風や洋風の建物が立ち並んでおり、表通りには商家や商業施設、裏通りには窯元の屋敷や作業場が集っています。町の西部の山あいに広がる絶景ポイント「岳の棚田」は、1999年に農林水産省から「 日本の棚田百選 」に選ばれました。「荒廃をふせぎ 、都会の人々が味わうことが少ない農作業と自然に親しむ故郷 」を目指した棚田オーナー制を古くから取り入れており、毎年、田植えや稲刈り、 脱穀などの農作業、年末の餅つきなどを通じた交流を深めています。また、そばや大豆のオーナー制の取り組みも行っています。

「日本の棚田百選」に選ばれた「岳の棚田」

 世界に誇れる町の伝統産業「有田焼」は1616年に朝鮮人陶工の李参平らが磁器の原料となる陶石を有田の泉山で発見し、磁器の生産が始まり、その後400年以上の間、食器や美術工芸品などを通じて、世界へ発信を続けています。

食器や美術工芸品などを通じて、400年以上世界へ発信を続ける「有田焼」

人口2万人の町に特徴的な高校と大学をもつ有田町

 有田町には特徴的な学校もあります。「佐賀県立有田 工業高校」には現在、全学年で 約450人の 生徒が学んでおり、「電気科 」「 機械科 」に加え、 県内唯一の「デ ザイン科」、「有田焼」の町らしい「セラミック科」を持つ。「デザイン科」では、身の回りのあらゆる「ものづくり」のデザインに対応するため、ポスターや広告などの平面作品、グッズや製品などの立体作品、CGやウェブデザインなども学ぶ 。公募やコンクールにも積極的に挑戦し、多くの生徒が入賞 。「 東京2020」の 聖火リレーのトーチをデザインした吉岡徳仁さんを輩出するなど、各地で活躍する卒業生も多いです。2018年度と2019年度にはクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんによる特別授業を行いました。「セラミック科」でには、ろくろや絵付 けなどの陶芸技術やファインセラミックス、工業技術全般について学び 、陶芸家から工業技術者まで、意欲的にもの づくりに取り組む生徒を育て、人材の育成を目指しています。 

 また町内には、「佐賀県立有田窯業大学校 」から2016年に移行した「佐賀大学芸術地域デザイン学部」のキャンパスがあり、「地域デザインコース」「芸術表現コース」の2つのコースを設置 、約160人が学んでいます。「地域デザインコース」には、発想力と表現力をベースに、映像やウェブなどの情報メディアを用いたコンテンツ想像力を生かして、先鋭的な芸術やデ ザイン提案ができる人材を育成する「地域コンテンツデザイン分野」、文化歴史資源やアート活動をマネジメントするための専門知識と実践力を身につけ、国内外へ発信できる人材を輩出する「キュレーション分野」、地域や自治体、 国際機関などが行うまちづくり、 景観デザイン、自然や観光 ・文化資源の発見と創造など、国内外の多様な「現場」をフィールドに実践する「フィールドデザイン分野」の3つの分野。「芸術表現コース」は、日本画、西洋画 、彫刻 、漆・木工芸 、染色工芸、工芸 、視覚伝達デザイン、 ミクストメディアなど美術・工芸各分野から専門分野を選び発想や技術を学んでいます。

 松尾町長は「人口2万人の町に特徴的 な高校と大学があり、多くの優秀な人材を輩出 していますが、残念ながら町内に彼らが活 躍できる場が不足しています。未来を創る企業の方々に町の若者も見ていただきたい。また未来を創る企業による有田町発の事業開発を通じ て、若者が有田で新事業を仕掛けるそんな未来も期待しています」と話します。

 有田町が進める交流人口増への取り組みの1つとして、2019年には「立命 館アジア太平洋 大学(APU)」と協定を 結び 、「 相互の人 的・知的資源の交流・活用を図り、教育・文化・まちづくり・国際化などで相互協 力し、地域活性化と人 材の育成に寄与するための交流連携事業」を行っています今年(2021年)3月には、ネパール・モザンビーク・インド・イン ドネシ アの学生4人が有田町に滞在し、4つの企業・団体でのインターンシップに参加しました。町をより深く知ってもらうことで、既存にとらわれない新しいまちづくりや 将来像を、 留学生 と町が 一緒になって考えるきっかけになったといいます。

 松尾町長は「交流人口増の取り組みとして、例えば、棚田をはじめ地元の人が所有する農園をもっと生かすため、デジタルの仕組みを使い、サテライトオフィス設置きっかけに町内に移住した人や、普段は都心で生活する人が仕事とのバランスをとりながら町内で農作業に取り組み、地元の人との交流につなげるなど、町内の交流を促進するためにもデジタル化は欠かせない」と話します。

有田町の未来を見据える「有田型STEAM教育モデル」への取り組み

 有田町は今年(2021年)3月、地域の未来を見据えた「有田型STEAM教育モデル」を進めると発表しました。「STEAM」とは、「Science(科学 )」「Technology(技術)」「Engineering(工学・もの づくり)」「Art(芸術・リ ベラル アーツ)」「Mathematics(数学)」の 頭文字を組み 合わせた造語で、2000年代に 米国で始まった教育モデルで、STEMという 理数教育に、Aの創造 性教育を加えた教育概念です。町では、地域や家庭、学校 、町や教育委員 会とSTEAM JAPANと佐賀 大学で構成するSTEAM教育推進団体が連携し、有田町ならではの「STEAM教育」を推進していきます。松尾町長は「ものづくりの町、有田町にはSTEAM教育を進める産業や教育が揃っている。『知る』から『創る』のサイクルを生み出す学び の答えは1つではなく、これらの取り組みに共感頂ける企業にはぜひ、町内にオフィスを構えていただき、町の若者の誇りを高めることにつなげたい」と話す。

「有田型STEAM教育モデル」を発表した松尾町長(中央左)

 松尾町長は「デジタル時代への対応を積極的 に進める有田町で、デジタル化推進の挑戦をしたい、豊富な資 源あふれる町内で心身健康 に働きたい、経営したいという企業のみなさまをお待ちしています。共に新しい時代の新しい町・新しい働き方・新しい生活を創っていきましょう」と呼び掛けます。