五城目は「オルタナティブ」を探せる場所だった。田舎が嫌いだった人間が、秋田でキャリア教育を行う理由

移住者と地元民が連携した新しい取り組みが続々と生まれる地が秋田県にある。

秋田県の中央部に位置する五城目(ごじょうめ)町だ。人口約9000人の小さな町だが、廃校になった小学校の校舎を活用したシェアオフィス「BABAME BASE」や、古民家を改装して宿泊施設として蘇らせたプロジェクト「シェアビレッジ」などで注目を集めている。

今回紹介する秋元悠史さんは、その町で暮らす移住者の一人だ。秋田県大仙市出身の秋元さん。高校までは秋田で育ち、大学進学を機に上京した。卒業後は都内のIT企業に就職した後、島根県海士町(あまちょう)で教育事業に携わった経歴を持つ。

なぜ秋元さんは、地元・秋田への移住を決めたのだろうか。これまでの過程を聞いた。

地域づくりのアプローチの仕方を学んだ海士町での5年半

「いつか秋田に戻り、秋田のために何かしたい。学生時代からそう思っていました」

そう話す秋元さんは現在、株式会社ウェブインパクト、BABAME BASEの指定管理を手掛ける一般社団法人ドチャベンチャーズ、秋田大学でのキャリア教育プログラムを運営する株式会社あきた総研などに、フリーランスとして関わっている。

大学卒業後、都内のIT企業に入社。プログラマーとして約2年働いた後、秋田に戻ろうかとも考えた。しかし、そんなときに学生時代に訪れた海士町の求人をたまたま見つけたという。「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」における学習センター職員の募集だった。

「海士町には、未来を作っていこうと自分の志に向かって動く人が多くいて。『そんな田舎もあるのか』と関心を持っていました。その求人は、自治体が統廃合の危機にある高校を何とか立て直そうという取り組みで。最先端の地域づくりを学ぶことで、秋田に持ち帰りたいと思い、移住を決めたんです。海士町に計5年半滞在した中で、地域づくりにも色んなアプローチの方法があることを学び、非常に視野が広がりましたね」(秋元さん)

秋元悠史さん

秋元悠史さん

海士町に移住して3~4年がたち、そのまま残ることもできたが、秋田県への移住も検討するなかで、友人が移住をしていた五城目を訪れる。そこには、海士町とはまた違った「オルタナティブを探せる場所」があった。当時30歳、故郷への移住を決めた瞬間だった。

「今思うのは、五城目と海士町は対極にある地域づくりをしているということです。海士町は、トップダウンが強めな行政主導型で成果を出してきました。五城目は、移住した人の『これをやりたい』を積み重ねた結果、町が盛り上がって。どちらが良い悪いではなく、五城目の民間主導型の地域作りの雰囲気にも惹かれていったんです」(秋元さん)

当初は週半分をウェブインパクトの社員として、残り半分をフリーランスとしてドチャベンチャーズ、秋田大学での仕事をしていた。2019年4月から現在の形となっている。

田舎特有の閉鎖的な環境が嫌だった学生時代

現在は、秋田県における複数の地域づくりに携わっている秋元さん。しかし、学生時代は田舎特有の閉鎖的な環境になじめず、「こうした状況を変えたかった」と語る。

そのため、中学生のときは「学校の先生になりたい」と思っていた。テストの点数によって進路選択が分けられることに疑問を感じ、キャリア教育ができる先生をやりたいと思っていたという。しかし、大学のときに先輩に勧められて就職活動をしてみると、これまで学んできたことが、就職活動や入社してから求められていることと違うと感じた。

「面接や入社後に求められている力も分からないまま、自分自身が生徒を社会に送り出す立場になるのも違うなと思って。民間企業に入った結果、教員になって秋田に帰るではなく、秋田に帰って『地元を変えたい』という理由だけが残りました。

ただ海士町でのキャリア教育を通して、地域のためという目的も良いけれど、まずは自分がやりたいことを追及して、結果的に地域のためにならなければ長続きしないなと思って。そんなときに『人口減少をどうにかしたい』ではなく、それぞれが自分が描く面白い未来に向けて仕掛けている五城目と出会い、面白いなと思ったんです」(秋元さん)

BABAME BASE

BABAME BASE

地域活性化や地方創生に携わりたい人は増えてきているが、そうした思いの裏側には「仲間が欲しい」「居場所が欲しい」という気持ちを持つ人もいる。しかし、そうした承認欲求をで地域活動に関わると、うまくいかないときに「良かれと思ってやったのになぜ認めてくれないの」と、周りも自分も責めてしまうケースを見てきたと秋元さんは語る。

そのため、自分自身がやりたいこと、楽しいと思えることに取り組み、それを差し出す人が増えることで、地域の新たな未来が描かれていくのではないかと考えた。

若い人や移住者がやりたいことをやれる環境を

「あんまり考えずに移住した中で、周囲の協力のおかげで、ここまでやってこれました。明確に『これをやりたい』ということがないので、ずっと五城目にいるかも分かりませんが、自分が貢献できることがある限りは仕事を続けたいと思っています」(秋元さん)

秋元さんに今後のビジョンを聞いてみると、このような答えが返ってきた。ただ、その目には力強い意志が宿っている。今年度は、「自分が意義を持ってやりたいと思えること」に取り組む人を増やすため、高校生向けのキャリア教育支援も新たに始めるという。

「学生に話を聞いてみると、『もっと自由に考えてほしい』と感じることが多いです。勉強する立場で、社会の一員ではないと捉えられていて。自分が社会に対して何か感じたとしても、発言をしてもどうにもならないし、求められていないと感じてしまっています。

つまり、社会人と学生が分断してしまっているのです。そうして身近にいる人の関係性の中だけで育ったのに、いざ就職活動になると急に選択肢が増えて、『自分で選べ』と言われてしまう。学生のときに縛るのではなく、早くから社会との接点を作れたらいいなと。

やりたいことがなくても良いんです。何となく『この人面白そう』と思ったから話を聞いてみたり、プロの技を知って高い技術を目の当たりにしたりすることで、視野が広がることが重要です。これにより、親が言っているからなどの理由で、本当にやりたいことに挑戦できないという学生を少しでも減らせる支援ができたらと思っています」(秋元さん)

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シビレでは、6月8日(土)に東京駅前「TRAVEL HUB MIX」で開催される「東北シゴト創造大学」の運営協力を行っています。東北で新しくシゴトを生み出してきた先駆者の方々を紹介し、新たにビジネスのチャンスをつかんでもらうイベントとなっています。

秋元さんが活躍されている秋田県でも、秋田商工会議所 秋田県事業引継ぎ支援センター 統括責任者の河田匡人さんが登壇し、後継者人材バンク事業の取り組みについて語ってもらう予定です。関心のある方は、ぜひこちらのページから応募してみてください!

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