伝統を守り挑戦を続け、東北を豊かにする

<OFF TOKYO×キラ☆企業>有限会社東北工芸製作所/常務取締役 佐浦 みどり氏

東北・新潟にはキラリと輝く企業がたくさんあることを知っていますか?そこでは先輩社員たちがイキイキと仕事をしています。このサイトでは、そんな素敵な企業を「キラ☆企業」としてご紹介しています。
「自分らしく働きたい!」「 やりがいを感じる仕事がしたい!」「 夢を叶えたい!」と考えていたら、「キラ☆企業」で紹介する先輩社員のメッセージに耳を傾けてください。

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この企業のキラ☆ポイント!

  • 伝統的な技法を守りつつニーズに合わせ「使う工芸」品を展開
  • 積極的なコラボで付加価値を創出し国内外の市場にアプローチ
  • 創業時から変わらぬ「東北の産業振興」の思いを掲げ100周年へ

「伝統工芸」と呼ばれる技法を用いながらも、創業から一貫して「見る工芸から使う工芸へ」という精神でものづくりを続け、時代やニーズの変化に合わせて多様な商品を展開しながら歴史を重ねてきた東北工芸製作所。伝統を守りながらもベンチャースピリットは変わることなく、2000年代に入ると外部の企業やコンテンツ、クリエイターらとのコラボレーションも積極的に展開している。

「海外に通用する商品を作り、東北の産業を振興し、地域を元気にする」。創業に関わった人たちの、その思いが正しかったことを伝えるため、まずは100周年、そしてその先へ。これからも日常の中で使われ続ける玉虫塗の商品を作り続けたい。これまでの挑戦とこれからの展望について、常務取締役の佐浦みどりさんに思いを伺った。

常務取締役 佐浦みどり氏

このエリアで事業をスタートした経緯を教えてください

玉虫塗はもともと国立工芸指導所、現在の産総研(産業技術総合研究所)東北センターで、東北の産業振興と輸出の促進のために開発されました。伝統的な下地を施した上に銀粉やアルミニウムを蒔(ま)き、その上に染料を加えた透明な漆を重ねて奥行きを深めるという技法です。

1933年に初代が玉虫塗の特許実施権を得て創業し、新しいものづくりをするベンチャー企業として、洋食器や洋風のインテリアを作り始めます。当時の工房の近くに進駐軍のいる病院や将工クラブがあったという立地もあり、米兵やその家族向けに販売するようになります。マッカーサー元帥の奥さまもいらした記録が残っています。

進駐軍が引き揚げた後は、地域の人たちが日常使いする身近な暮らしの道具として、重箱やおわんなどの商品を販売します。その後、高度経済成長の時代の波にも乗って発展し、創業50年を迎えた2年後の1985年、宮城県から伝統工芸品のお墨付きを頂きました。それをきっかけに天皇陛下への献上品や、県にお客さまがいらしたときの記念品などにも玉虫塗を使っていただくようになりました。

創業以来、ものづくりの精神として「見る工芸から使う工芸へ」ということを大切にしており、これが商品化の基準でもあります。創業から87年、素材や塗るもの、表現する方法が変わるなかでも、伝統的技法を守り続けています。

事業の中で力を入れていることは?

平成に入りバブルが崩壊すると、作れば売れる時代ではなくなり、付加価値がどれだけ加味されているかが重視されるようになりました。その頃から宮城や仙台にゆかりのある方たちとのコラボ商品を開発する機会が多くなり、それが震災後も続いています。

一番のきっかけとなったのは、2009年にアニメ「戦国BASARA」とのコラボで作った玉虫塗の絵はがきでした。それまで予約販売を行ったことはなく、作る数も200〜300という単位だったのですが、予約開始後すぐに1,000枚以上予約が入り、3カ月で10,000枚ほどを売り上げました。

「戦国BASARA玉虫塗絵はがき」。左が「伊達政宗」、右が「片倉小十郎」

アニメの版権を使うことは初めてでしたが、アニメ会社の方から作品のことはもちろん、「値段はこれくらいの方がいい」とか「ファンはこういうものが欲しい」ということを教えていただいたことでヒット商品となりました。その時に、「詳しい業界の人としっかり商品開発するとうまくいくんだな」と手応えを感じました。いろいろな方とコラボできるようになったのは、そこからですね。

震災後には外部のクリエイターの方とコラボして新しいブランド「TOUCH CLASSIC(タッチクラシック)」を立ち上げました。震災後はコロナ禍の現在と同じような状況で、観光客のお土産品やイベントの記念品に頼っていた売り上げがなくなってしまいました。でも従業員もみな幸い無事だったので、今後どうしていくかとなったときに、もう一回原点に戻ろうと考えたんです。

玉虫塗はもともと輸出をするために作られましたので、あらためて国内外で売れるものづくりをしようと。ご縁があって仙台出身のクリエイターの人たちとつながることができて、皆さん玉虫塗を応援したいという思いを持ってくださっていたので、一緒に玉虫塗の技法を生かしながら新しいものづくりを始めました。

玉虫塗は赤と緑が中心ですが、海外で日常使いされるものは白か黒が多いことから黒をベースにデザインし、2012年にドイツの展示会に出展して市場調査を行いました。色やつや、形にはすごく興味を持ってもらえた一方、日常使いや輸出の面での課題も分かり、頂いた意見を踏まえて改良を重ね、2年くらいかけて定番化しました。

最近は、2020年シーズンから楽天イーグルスさんのヘルメットに玉虫塗が採用されました。耐久面が課題でしたが、数年前からナノコンポジット塗装という食洗機でも洗える漆器をつくるための技術に産総研さんと取り組んでいましたので、ボールが当たっても耐えられる硬度、紫外線に当たってもシーズンを通して使える耐久性、量産できる方法などを相談しながら完成させました。

コロナ禍に対応した新商品、消毒液などをいれるスプレーボトル

これから目指したいことはなんですか?

玉虫塗の背景にある歴史や東北工芸製作所のものづくりのことを知りたい、体験したいという方が増えています。これからは、工房のある仙台市愛子(あやし)に玉虫塗について学ぶ、製作体験ができる施設を作りたいと考えています。

環境に配慮した取り組みや企業姿勢も問われてきているので、モノづくりの面では、素材や塗料も新たなものを取り入れるために産総研との共同研究を続ける、異業種の方との共創もこれまでと同様に今後も取り組んでいきます。

東北工芸製作所は、国立工芸指導所が産業振興のために開発した技術(玉虫塗)を使って製造販売するために創業した会社です。東北が豊かな地域になってほしいという思いが変わらず根底にあります。
かつて国の政策で生まれた玉虫塗が100年経った後も形を変えながら受け継がれるように、つなげることが自分の使命でもあり、誇りになります。

地元の方に支持して買ってもらえないと、地場産品としても、伝統工芸品としても残りません。この地域の方にこの企業があって良かったと思ってもらえる活動をしたいですし、宮城といったら玉虫塗だよねと思ってくれる人が増えたらうれしいですね。

若者へのメッセージをお願いします

昔と違って、一つの会社に縛られる働き方は減っていて、当社でも複業で週2回だけ工房に入っている人もいます。一つの会社にいるだけでは得られない外からの情報を持ってきてくれるので、お互いに新鮮さを保てるといいますか、仕事の幅も広がります。必ずしも週5回勤務して何時から何時ではなく、必要な時に働くというスタイル(可能な業種)も今後増えてくると思います。仙台は、温泉も海も山も近いので、自分の生活スタイルを見つけられます。

東日本大震災やコロナを経験して、自然に恵まれている、人々が温かいという環境にある東北は、働きながら家族やプライベートの時間を楽しむことのできる、本当の豊かさを手に入れられるところなのかもしれないと最近感じるようになりました。

東北の価値を高めていくには、発信力と独創性のある、みなさんのような若い人たちが不可欠ですし、私も、よりみなさんとかかわっていける機会が多くできたら幸甚です。

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有限会社東北工芸製作所 常務取締役 佐浦 みどりさんが登壇されるイベントは、2月18日(木)開催です!実際に、お話しを聞きにご参加ください。