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東京で飽和しているスキルもここでは引く手あまた―産官学でITを推進する北九州市

北九州市

古来より陸上・海上交通の要衝として発展し日本の近代化を支えた門司港、世界遺産にも認定された「八幡製鉄所」など、日本の一時代を象徴する場所を複数持つ福岡県北九州市。
ものづくりのイメージが強いこの街ですが、実は30年近く前から情報産業に力を入れてきた老舗のIT先進都市でもあります。
その取り組みの鍵となっているのが産官学一体となったコミュニティの力。他地域に先駆けてITインフラの整備に取り組むなど、時代の先を読む北九州市の産官学連携を代表する4人にお話を伺いました。

インタビュイー:
公益財団法人九州ヒューマンメディア創造センター 専任主幹研究員 糸川郁己さん
ミシマ・オーエー・システム株式会社 代表取締役社長 溝田力三さん
北九州市産業経済局企業立地支援課 情報・通信産業担当係長 吉田智子さん
北九州市産業経済局企業立地支援課 情報・通信産業担当 中江伸也さん
※本記事は70seedsで掲載された内容を一部修正・転載したものです

産官学が連携、10以上のITコミュニティがある街

―北九州市がITに力を入れていくことになったきっかけはなんだったのでしょうか。

糸川:30年近く前になりますが、1989年に北九州情報サービス振興協会(KIP)ができたことです。

―30年前!インターネットが普及するだいぶ前ですね。

糸川:そうなんです。今では52社(2017年6月1日現在)が参加する団体になっています。その後2000年には九州インターネットプロジェクト(QBP)ができて総務省との連携でブロードバンド化を推進していったり、2002年には北九州e-PORT構想というものが立ち上がりました。

イベントに登壇する糸川さん

イベントに登壇する糸川さん

―e-PORTとは?

糸川:「響灘ハブポート」(sea-PORT)「新北九州空港」(air-PORT)という海・空の物流に関する国際ハブポートの整備に加え、第3の国際ハブを「情報の港」(e-PORT)として位置付けて、誰もがICTサービスを使えるようにしよう、という構想です。

―その構想が北九州市で生まれたのにはどのような理由が?

糸川:インターネットが広がりつつあるとき、データセンターが必須インフラだという意識があったんですね。北九州市は八幡製鉄所があったほど、災害が少ないし地盤が強固だということから、インフラ整備を進めようという動きが起きたんです。あまり知られていませんが西日本最大級のデータセンターがあるんですよ。現在では北九州e-PORT構想2.0として発展し、産学官民金連携で新しいITサービスを産み出すプラットフォームとなっています。

西日本最大級のデータセンターアジアンフロンティ

西日本最大級のデータセンターアジアンフロンティア

―その動きには地元の協力が大きく働きそうです。

溝田:そうですね。九州ヒューマンメディア創造センターや公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)といった市の外郭団体や、大学との連携が整っていることは北九州の特色だと思います。企業の人材育成にも協力的に関わってくれているんですよ。

糸川:企業だけでなく、ITコミュニティも10団体以上あります。北九州市内で初のハッカソンをやったのが3年前、その他、デザイナーやエンジニアの勉強会も自発的に開催されているんです。

―10以上も!地方都市としてはかなりの数ですね。IT都市としての長い歴史を感じます。

プレイヤーはまだまだ必要、エンジニアが活躍できる街

―近隣に福岡市がありますが、比較されることも多そうです。

糸川:はい(笑)。ただ、福岡市と北九州市って、実はまったく毛色が異なっていて。

―それはどういうことですか?

糸川:北九州市は約50年前に数十万人規模の自治体5つが合併して100万都市になった市なんですね。なので広域に分散している街でもあって。一極集中で出来上がってきた福岡市とは、都市の成り立ちとしてそもそも違うんです。

―なるほど。

糸川:また、八幡製鉄所に代表されるようにいろんな主要産業は北九州発だったりするんです。その中で福岡市に移動していっているものもあるから、北九州市の人たちは危機感を持っているんですね。だからこそ、いいアイデアがあれば自治体含めてすぐに動くフットワークの軽さも北九州市の特色の1つだと思います。

―そう考えると、いろいろと挑戦していきたいエンジニアさんにはいい環境ですね。

中江:しかも利便性が高い田舎なので、「田舎暮しの働き方」ではなく、「ここを拠点にどう働くか」という考え方ができるのも魅力だと思います。

左から中江さん、吉田さん、溝田さん

左から中江さん、吉田さん、溝田さん

糸川:あとはフリーランスよりも就職したい、という人に向いているかもしれませんね。

―そういう視点でいうと、地元企業から求められる人材像ってどんなイメージなんでしょう。

溝田:どんな分野でも受け入れたいというところが多いですね。プログラム開発、Web開発はもちろん、システム系のニーズも増えていきそうです。

糸川:個人的に受けた相談ではJava人材が必要とか、東京では飽和している言語やスキルが北九州ではまだまだ欲しがられている印象ですね。ITなのに落ち着いて仕事ができる環境があるのは北九州ならではかもしれません。定年まで勤められるシステム会社もあるくらいです。だからこそ、逆に何か社内に改革を起こしたい、というニーズも高いですね。

―最後に北九州市でITの仕事をしたい方へのメッセージを教えてください。

溝田:私の会社は北九州で30年くらいの企業ですが、最近は産学連携がさらに活発ですね。新たなIoT(モノのインターネット)の技術などを作り出しやすい環境です。市や外郭団体の支援も充実しています。これから新しいことを始めていくにはわくわくする、いい環境の街だと思います。テレワーク支援、弁護士さんなどのサポートも手厚い、これから起業したい人にも魅力的ですね。

ヤフーニュース編集部の災害時対応オフィスも

ヤフーニュース編集部の災害時対応オフィスも

糸川:市自体もスタートアップやIoTに非常に力を入れています。ビジネスアイデアを募集して試作品をつくるような取り組みも行われています。北九州工業高等専門学校および西日本工業大学では、市と連携協定を結び、それぞれ試作品づくりと産業デザインのサポートをしていますので、IoTに取り組みたい方はぜひ北九州に来ていただきたいです。

もう一点、地域内に多数のコミュニティはあるとはいえ、コミュニティ人材はもっと増えてほしいので、コミュニティ活動を一緒にやっていきたい人にもぜひ来ていただきたいですね。コミュニティ活動にも市の応援がつきますから(笑)。